GLORY BEYOND DREAMS 中島千博選手インタビュー

インタビュー | 2023.03.14 Tue

『家に居た時間より道場に居た時間の方が長かったと思います』

彼はKO至上主義のファイターたちが集まる K-1クラッシュのスーパーフェザー級チャンピオン 『中島 千博』
塾には行かずに極真空手に没頭していた学生時代
そして東京ドームでのTHE MATCH 2022出場
どのようにプロになったのか?なぜキックボクシングに転向したのか?
中島選手の言葉を一つずつ紡いでその理由を記しました。

中島千博選手(POWER OF DREAM 所属)

中島 千博

所属:POWER OF DREAM

生年月日: 1994年11月24日

身長: 169 cm

体重: 60 kg

出身地: 東京都練馬区

経歴:
第10代Krushスーパー・フェザー級王者
極真会館2017年第34回全日本ウエイト制 軽重量優勝
極真会館2017年オールアメリカン大会無差別級 3位

―自己紹介をお願いします。

中島)中島千博(なかじま ちひろ)です。1994年11月24日生まれです。東京都練馬区出身の28歳です。K-1のクラッシュという団体の、スーパーフェザー級のチャンピオンです。

ー初めての防衛戦から3か月が経ちます。環境の変化はありましたか。

中島)まず、去年の1月にスーパーフェザー級のトーナメントがあって、そこで優勝しました。12月には防衛戦があって、もう3か月も経つんですね。皆さんからおめでとうと祝福の言葉をかけてもらいました。でも、普段は毎日練習なので、日常生活に大きな変化はないです。

2022年12月の試合では初の防衛を果たした

―普段の練習内容を教えてください。

中島)POWER OF DREAMというジムに所属していて、日曜日以外は基本的に毎日練習をしています。朝は8時半から、ジムのみんなと集まって会長の家から走ったり、トレーニングをして、夜はジムでミットとかスパーリングをするっていう感じです。毎日朝夜みっちり練習をして、空いている時間でバイトをしたりしています。

プロデビュー目前に鼻を骨折。それでも「気持ちさえ真っすぐであれば大丈夫」。

―キックボクシングを始めたきっかけを教えてください。

中島)元々4歳の頃から20年間極真空手をしていました。5-6年前にPOWER OF DREAMの会長と、武居由樹選手たちが僕の通っていた空手の道場に出稽古に来て、そこで僕が練習している姿をPOWER OF DREAMの会長が見て、武居選手たちに空手の蹴り技を教えてほしいというふうに言われて。それがきっかけで、POWER OF DREAMのトレーナーとしてジムに行かせてもらうようになりました。セコンドに入ったりして、自分が教えた蹴り技で選手が相手を倒したりする姿を見て、「自分が実際にプロの世界に入ったらどれぐらい通用するのかな」と思うようになりました。そして4年前に空手からキックボクシングに転向して今に至ります。

幼い頃から極真空手に夢中だった

―空手からキックボクシングに転向して苦労したことはありますか。

中島)顔面へのパンチに苦労しました。空手は、蹴り技が有るスポーツなので、蹴り技は上手く活用しているんですけど、顔面パンチはないのでなかなか慣れませんでした。プロになる前の練習段階では、顔面パンチの防御を非常に苦労しました。

―どのように顔面のパンチに適応していったのでしょう?

中島)とにかく練習しました。僕の場合は、ジムの選手たちがチャンピオンクラスだったので、最初にそれはもうやられましたね。とにかくいっぱい練習して慣れていったっていう感じですかね。実はプロデビューする前に鼻が折れたこともあります。

―鼻を骨折して、曲がってしまったと聞きました。

中島)最初の頃は、やはり慣れていなくて顔面にパンチをくらうことが頻繁にあったんです。最初は鼻血が出て、でも練習は鼻血くらいでは休めないので。毎日そのまま続けて、パンチをもらい続ける日々でした。徐々にもらわなくなって、顔の腫れが引いたときに鼻が曲がっていたことに気づきました。後々病院に行ったら、前に折れているねって言われて。痛かったんですけど打撲かなと思っていて、そこで初めて自分の鼻が折れていたことに気が付きました。鼻は曲がってしまいましたけど、気持ちさえ真っすぐであれば大丈夫です。

家に居た時間より道場に居た時間の方が長い。競技人生を送ってきました。

―4歳の時に空手を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

中島)親に言われて、いじめられないようにという理由で近所の道場に入ったのがきっかけです。初めから極真空手で、20年間成増道場で同じ先生に教わりました。

―昔から強かったんですか?

中島)それが凄く遅咲きなんです。4歳から始めて、小学校を卒業するまで一度も入賞したことがありませんでした。中学1年生の時に初めて入賞して、高校1年生で初めて優勝しました。僕、昔からお米を食べるのが大好きで小さいころはぽっちゃりしていたんですよ。だから昔はスピードで負けてばかりでした。だんだん身体が成長するにつれてぽっちゃりがパワーに変わって、強くなっていきました。

―空手はずっとお好きなんでしょうか。

中島)入賞して強くなったことを実感でき初めてから、今でもずっと好きです。学生時代は夏休みに朝から晩まで道場にいて、家より道場に居た時間の方が長いくらいでした。塾に行かずに道場に行ったり、本当に競技人生ですね。

―20年の競技人生での輝かしい実績をお聞かせください。

中島)2017年に開催された第34回の全日本大会で優勝して日本王者になったこと。同じく2017年にオールアメリカ大会という無差別級の大会で日本人歴代最高の3位になったこと。そして2018年にUSウエイト制の80キロから90キロまでの体重別の大会に出て優勝したことです。

極真空手時代は日本王者にもなり世界大会でも好成績を残していた

―空手の経験が今に活きていると感じることはありますか?

中島)僕は蹴りの選手という認識が持たれていると思います。そこで不意を突いてパンチでダウンをとったり、戦略に上手く活用できていると思います。あと僕は、教えてもらったことをきちんと取り組むことで強くなれると思っています。実際空手でやってきたことが今もキックボクシングに活きているのですぐには身につかなくても、地道に必ず活きてきます。

試合で勝つことが一番のスポンサー活動

―空手の試合では、ファイトマネーのようなものはあったのでしょうか?

中島)極真はアマチュア団体なので、ファイトマネーはありません。プロになってファイトマネーをいただいて、自分の試合をお客さんに見てもらえるっていうのはやってきてよかったなと思っています。

―ご自身でスポンサーを探す活動はされていますか?

中島)僕を応援していただいている方の多くは、空手時代から知ってくださっている方です。毎日練習なので、スポンサー活動という活動はあまりできていませんが、その分、試合に出てしっかり勝つことが一番の活動だと思っています。空手時代は道着だったのであまり気にしていませんでしたが、今は自分の試合のコスチュームに会社の名前を載せていただいていますので、負けられない思いはありますね。

―プロになってから、何か変化したことはありますか。

中島)大きく違うのは体重です。元々空手時代は体重が85、6キロあったんです。プロデビューが62.5キロの契約だったので約25キロ減量しました。空手時代は筋トレ、ウェイトトレーニングがメインだったのですが、プロデビューするにあたってダッシュとか走るトレーニングの方が多くなり、自然と無駄な筋肉や脂肪が落ちて痩せていきました。

―食事面では何か意識していることはありますか。

中島)食事面もすごく意識するようになりました。以前はラーメンが好きだったけど、自然と食べなくなりました。あとは鶏肉と野菜をメインにしたり。試合が決まっていないときは、白米も食べるんですけど。体調は前よりむしろ健康になったと思いますね。普段から食事に気をつけておかないと、いざ体重を落とすとなったときに落ちづらくなっちゃうので。

―普段から食事に気を付けていると、減量時にどのようなメリットがありますか。

中島)脂肪がつかないから体重を落としやすいです。水抜きってよく聞くと思うんですけど、急な減量は体にも負担になるので、僕は水抜きをしないように減量をしています。減量で最後の方は食事を我慢したりするのできついですけど、でも試合当日に体調を悪くするということは今まで一度もないですね。

毎日の食事を気にかけて生活している

大舞台、東京ドームでのTHE MATCH 2022での敗戦を経て

―キックボクシングに転向されてから、印象に残った出来事はありますか。

中島)去年は特に充実した1年間でした。1月にクラッシュの大会で優勝して。6月には東京ドームでTHE MATCH 2022の試合に出場させてもらいました。人も会場もすごくて、とても楽しかったです。結果は判定負けで、ネットでいろいろ書かれたりもして、すごく悔しくかったんですけど、もっと強くなりたいという気持ちが出て、その負けをバネにして防衛戦に向けて修正しました。

THE MATCH 2022での試合は惜しくも判定負けだった

―THE MATCH 2022での敗因は何だったのでしょうか。

中島)THE MATCH 2022では、東京ドームでKOをしたいという欲が出て、自分の強みのキックを忘れて、逆にパンチで行ったところに攻撃をもらってしまいました。大舞台だからこそ目立ちたいっていう欲が出て、練習と違う動きをして空手を裏切ってしまったことが敗因になったと思います。

―防衛戦に向けて、どのようなところを意識して取り組んだのでしょうか。

中島)防衛戦だから勝たなくては、という意識はもちろんしたのですが、一番は自分の駄目だったところをなくせば自然と強くなるので。その弱点をなくしていったという感じですね。戦う人は毎回違うので、その人に勝つためにどうするかっていうふうに練習をしました。自然と練習していれば、ベルトの防衛もできると思いますし。逆にベルトのためって思いすぎてしまうと固まっちゃうというか、自分の中で。広く俯瞰して見たいので、ベルトをあまり思いすぎず、相手をよく研究するようにしています。

東京ドームでの試合は今まで以上に反響があった

―THE MATCH 2022を境に格闘家としての価値観に何か影響はありましたか。

中島)あれだけ広い会場での試合はほとんどないと思うんです。なので、あのときの思い出というか、印象をなくさないように、1個1個の試合でしっかり、あれを思い出してやっていこうというのがあります。ネットでいろいろ書かれてしまって、応援してくれた人への申し訳なさも痛感しましたが、それだけ期待もされていたということなので、もっと頑張らないといけないなと改めて思いました。あと、実は、THE MATCH 2022をきっかけに大好きなキン肉マンの作者の方にお会いすることができました。

皆にとってのアンパンマンが、自分にとってはキン肉マン

―キン肉マン、お好きなんですか?

中島)小さいころから大好きです。普通の子がアンパンマンを見て育つ中、僕はキン肉マンを見て育ちました。漫画も全巻持っていますし、ゲームもやっていましたし、キャラクターも全部言えるくらい好きなんです。

―キン肉マンの作者、ゆでたまご先生とお会いした経緯をお聞かせください。

中島)THE MATCH 2022の入場シーンで流すプロフィールに「無類のキン肉マン好き」と運営が書いてくれてたんです。ゆでたまご先生は嶋田先生、中井先生の合同ペンネームなんですけど、中井先生と息子さんがTHE MATCH 2022を観に来られていて、後日連絡をくれました。

憧れのキン肉マンの作者 ゆでたまご先生との3ショット(左:嶋田隆司 先生 右:中井義則 先生)

―中島選手にとっての、キン肉マンの名シーンを教えてください。

中島)超人オリンピックという大会で、超人が新幹線を押して新幹線がどこまで進むか競うというシーンがあるんです。そこに子犬が来ちゃって、子犬を守るために、テリーマンというキャラが、ルールを無視してでも子犬を助けたんです。生き物を優先した優しさが今でもすごく印象に残っています。優しい男になりたいなって思います。

しゃべりは苦手。でも、培った技を見て欲しい。

―RDXを使ってみての感想を教えてください。

中島)グローブも使わせてもらっていますが、僕はトレーナーもしているのでミットを一番使わせてもらっています。使用感はすごくいいですね。ミットが分厚いので、怪我もなく、自分の負担が軽くなっています。打ち心地も持っているとしっかり、手にかかる感じがあります。

―これまで使用していたミットより痛みが軽減されているんですね。

中島)僕のジムは結構がっつりパンチとか蹴りを打つので、肘を痛めたりすることが多かったのですが、怪我はなさそうなので安心して使えます。

―ありがとうございます。これからの展望を教えてください。

中島)まだ決まってはないのですが、K-1の試合に出たいなと思っています。昨年防衛できたことによって、また大きい舞台も出れると思うので。いつオファーが来てもいいようにしっかり練習したいと思います。

―最後に、中島選手にとって「プロ」とは何でしょうか。

中島)お客さんがチケットを買って、試合を見に来るというのが、プロとしての試合だと思います。勝ち負けも大事ですけど、僕の中では見に来てくれている人に、僕の蹴り技とか戦い方を見て、すごいなとか、非日常を楽しんでもらいたいという思いがあります。

―エンターテインメント性もありますよね。

中島)僕は喋りが苦手なので煽ったりはできないんですけど。その分、技とか、今までやってきたものを、見て、楽しんでいただけたらなと思います。あとインスタグラムとかでプライベートなことや、練習風景も載せたりしているので、そういったところからも興味を持ってくれる人がいると嬉しいです。

―ありがとうございます。応援しています。

中島)ありがとうございます。

編集後記:

「極真空手の世界で着実にキャリアを積み重ね、キックボクシングに転向した中島選手はキックボクシングの世界でも確実にキャリアを積み重ねています。
THE MATCH2022に出場したことで幼い頃から大好きだったキン肉マンの作者に会えて嬉しそうに語る姿は少年のようでもあり、格闘技が心から好きな様子がインタビュー中も伝わってきました。
プロというのは格闘技を楽しみ、お客さんにも非日常を楽しんでもらえるようにしっかりと準備をすることが大切だと感じた取材でした。」(RDX Japan編集部)

インタビュアー 冨永潤一、上村隆介

中島 千博

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