GLORY BEYOND DREAMS 白須 康仁選手インタビュー前編

インタビュー | 2023.02.15 Wed

【前編】
「現役時代にやり残したことがある」
11年間のブランクを経て、現役復活を果たしたキックボクシング元WMAF世界スーパーウェルター級王者『白須康仁』。
強い思いを胸に、41歳でリングに戻った白須の異色のキャリアとこれからの思いを、前編・後編に分けてお届けします。

白須 康仁

所属:キングビースト

生年月日: 1980年4月24日

身長: 170 cm

体重: 70 kg

出身地: 千葉県木更津市

経歴:マーシャルアーツ日本キックボクシング連盟日本ウェルター級王座・WMAF世界スーパーウェルター級王座

大手術からの復活。再びリング復帰を目指す42歳

―去年末は大怪我の影響で12月末から入院(入院は2022年12月27日から)されたと聞きましたが、調子はいかがですか。

白須)ありがとうございます。まだ松葉杖が歩くのに必要ですが、最近やっと体重の1/2を掛けられるようになりました。昨年末の練習中に右ひざの後縦靱帯が切れて、半月板が壊れた影響で太ももの大腿骨という軟骨が割れてしまって。3か所同時に手術しました。

―大手術だったと思います。しかし、入院中もSNSにトレーニングの様子を上げられていましたね。

白須)手術した足は使えないですけど、上半身と手術していないほうの足はできるので。そこは強化しています。退院したあとはまたリングに戻ろうと思っているので、衰えないよう動かしています。

―「リングにいたい」という一心なんですね。

白須)41歳の時に、「ただやりたいから」ではなく、「どうしても後悔したくない」から、44歳までと期限を決めて復帰しました。なので、そこまでは悔いを残さずやりきりたいという思いは強いです。

城戸康裕選手との試合の様子

―44歳までの3年間と期限を決めての現役復帰です。「やり残したこと」とは何でしょう。

白須)どうしても、城戸康裕選手ともう一度闘いたい。今度こそ勝ちたい、という思いがありました。2007年にK-1 WORLD MAXという大会に出て優勝することを、当時の目標にしていました。そのトーナメントにもう少しで行けるかも、という時に城戸選手と対戦し、一度ダウンをもらってしまって負けてしまっています。そのあと、城戸選手がK-1 WORLD MAXに出て優勝されているのを見て、怪我で引退していたものの、もう一度挑戦したいと思いました。実は2022年6月、復帰後すぐに城戸選手と闘う機会がありました。その際も負けてしまって、やっぱり終わり切れないので、K-1のベルトを取って再度リベンジしたいと思っています。

40代でもできる姿を、同世代の人に見てもらいたい

―実際に復帰して、試合勘や心境はいかがですか。

白須)10年以上前に現役で活動していた頃よりも、体がよく動くように感じています。当時行っていたただのウェイトトレーニングから、競技に合わせたトレーニングとして全身に様々な角度から負荷をかけたりした内容を取り入れています。最新のものに変えたこともあって、体の使い方が上手くなり、打撃力も、スピードも、スタミナも上がりました。

―トレーニング内容以外に変えたことはありますか。

白須)食生活に気を付けるようになりました。肉よりも魚中心の生活を心掛けています。あとはお酒の量も減りました。今は怪我のリハビリ中ですけど、体の調子は悪くないので、早く試合がしたいですね。トレーニング次第で体も変わるし、「40代だけど、何でもできるんだぞ」という姿を見せたいです。

―「40代でもできる」という姿を、どのような方に見せたいですか。

白須)30代・40代の方に特に見てもらいたいです。周囲にも「40歳だから」と年齢を理由に諦めている人が多いので、同世代の人に向けて「人生一度だし、やりたいことをやったほうがいいんじゃないか」と、格闘技を通じてアピールしたいです。実際復帰を決めたときに、「やりたいことがあるけれど、家族がいる」、「仕事がある」のように悩んでいるよりも、既に諦めている人が多いと感じました。その人達のためにも、困難に立ち向かう姿・実際に実行に移す姿を見せたいです。

保険販売の営業・自身のブランドを持ち物販販売。
様々な経験を経て、強くなったリングへの思い

日刊ゲンダイでも大きく取り上げられた

―今回の現役復帰にあたり熱い思いを教えていただきありがとうございます。以前引退された際はどのような心境でしたか。

白須)今回怪我をしたのとは反対の、左ひざの前十字靭帯を断裂したことが、前回の引退を決意したきっかけでした。手術・リハビリを経て、1年ぶりにいざ復帰試合という直前にまた痛めてしまい「もう駄目だ」と決めつけてしまいました。それでも、当時は出し切って、悔いはないと思っていました。

―1度目の引退を決意したとき、ご家族の反応はどうでしたか。

白須)当時はまだ子供が生まれる前で、妻と夫婦2人で生活をしていました。引退を決めたことに関しては「あなたが決めたことに関して私は何も言わない」と言ってくれましたが、引退試合直前にまた痛めてしまったときにはかなり心配をかけました。当時膝に血が溜まっていて、実際に歩けなくなる可能性もあったのですが、ここでやめたら後悔すると思って、歩けなくなってもいいからやろうと試合に出て、引退しました。

姿勢良くパソコン作業ができるパソコンケースの日本代理店を行っていた

―引退後はどのような生活を送られていたのでしょうか。

白須)現役時代からインストラクターをしていたので、それを引き続き行いました。他にも、これまでしたことのないことに挑戦したかったので、保険の営業販売として会社に勤めたり、自分のブランドを持ちたい気持ちもあったので、物販の仕事もしていました。失敗だらけでしたが、将来目指すゴールに向けて良い経験できたと思います。

保険営業時代の白須選手と税理士の2ショット。

―充実した生活を送られていたと思います。その中で10年のブランクを経て、現役復活を志したのはなぜですか。

白須)代官山のジムでプロの選手を相手にインストラクターをしていましたが、そこで選手達に「悔いのないようにしっかり練習しよう」、「試合に対して気持ちが折れたらそこで終わり」、「強い気持ちをもって後悔なくやろう」という話を常々していました。そこで、自分を振り返ったときに「悔いが残ることがあるな」と気づきました。そこからは、「後悔したくない」、「後悔しないためにも挑戦しよう」と思いました。

LDHが運営する「EXFIGHT」でもトレーナーとして活躍

実践復帰にあたり、以前以上の体を作り上げる

―実際に復帰したときの心境を教えてください。

白須)なかなか上手くいかないな、というのが率直な感想です。引退して10年経っていたので、パンチが来たときの反応や打つときのタイミングがずれていて、思うように体が動かないなと思いました。こういった試合勘は練習をすることで取り戻すしかないので、徐々に取り戻していきました。

―引退から約10年、体の変化は感じましたか。

白須)体の変化も、35歳、40歳と5歳ごとの境目で筋肉の落ち方が早いなとか、太りやすいなとすごく実感しました。特に保険の営業職の時は体を動かさない期間が多かったので、すごく太りました。復帰を考えてから、体を動かしたり、食事も変えたのですが、みるみるうちに変わりました。

―ご自身の体の変化について、年齢以外に要因だと感じるものはありますか。

白須)やっぱりお酒ですね。とくに保険の販売営業時代かなり飲んでいましたので。お酒を飲むと、自律神経に作用するからなのか、体だけでなくメンタル面にも悪影響だったように感じていて、次の日気分が落ちてしまうんです。「あと少し頑張らなくては」という時のもうひと踏ん張りができなくなるなと思いました。あとは白砂糖ですね。血糖値が急に上がるので、そのあと疲れやすくなります。

後編はこちらから

白須 康仁

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